立山の亡者宿たてやまのもうじゃやど
小八はやっと目ざした宿屋へ着いた。主翁と婢が出て来てこの壮い旅人を愛想よく迎えた。婢は裏山から引いた筧の水を汲んで来てそれを足盥に入れ、旅人の草鞋擦のした蒼白い足を洗ってやった。 青葉に黒味の強くなる比のことで日中は暑かったが、立山の麓にな …