旧字:金龍山下
あたり一面の光景は疲れた母親の眼には余りに色彩が強烈すぎるほどであった。お豊は渡場わたしばの方へりかけたけれど、急に恐るる如くくびすを返して、金竜山下きんりゅうざんした日蔭ひかげになった瓦町かわらまちを急いだ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)