信長の声は、金碧きんぺき丹青たんせいかがやくうちにただ一つある墨絵の一室——狩野永徳かのうえいとくが画くところという遠寺晩鐘図えんじばんしょうずふすまをめぐらした部屋の上段から大きく聞えた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)