「だいたいその時伸子の瞼を下させたのは? 全身を蝋質撓拗性フレキシビリタス・ツェレアみたいな、蝋人形のようにしてしまった道程が説明されていない」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこで熊城君、この結び方一つに、廻転椅子に矛盾を現わした筋識喪失——あの蝋質撓拗性フレキシビリタス・ツェレアに似た状態を作り出したものがあったのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
だから、瞼が閉じられると同時に、蝋質撓拗性フレキシビリタス・ツェレアそっくりに筋識を喪った身体が、たちまち重心を失って、その場去らず塑像そぞうのように背後に倒れたのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)