虎子まる)” の例文
侍従の君のお虎子まるの匂を嗅いでからと云うものは、何処へ行っても色事が成功せず、こと/″\く失敗つゞきであった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
されば、お虎子まるの一件を始めとして侍従の君の彼に対するさま/″\な悪戯の数々は、ひょっとすると背後で此の女を操っていた左大臣の入れ智慧ぢえであったかも知れない。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ついでながら、筆者はその時分のお虎子まるがどんなものであったかを知らない。今昔にはたゞ「はこ」と云ってあるが、宇治拾遺には「かはご」とあるので、皮で造った筥が普通だったのであろうか。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)