菩提樹リーパ)” の例文
菩提樹リーパの茂った樹かげに立てたペンキ画の背景の前の椅子で、赤いプラトークをかぶった女が格子縞のスカートの皺をひっぱっている。
その古い菩提樹リーパの並木道をあっちへ横切ると、石敷の歩道がはじまる。槭樹ヤーセンの影の落ちる歩道は八方から集って、緑のたまりのような公園となった。
赤い貨車 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
中庭の光景のあちらの空に芽ぐんだばかりの緑色に煙る菩提樹リーパの大きな頂が見えた。煉瓦の赤い建物がそこにあるので、菩提樹の柔い緑色は一そう柔く煙のように見える。
赤い貨車 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
並木道の左右に売店が並び、各々が意匠した店名を、「アガニョーク」「ゴスイズダート」青葉の下にかかげている。これはモスクワの書籍市だ。菩提樹リーパの新緑、空のプラカート。
モスクワ印象記 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
モスクワ市をかこむ環状並木道ブルヴァールは今美しい五月の新緑である。ストラスナーヤ広場からニキーツキー門まで柔い菩提樹リーパの若葉がくれに、赤、黄、紺、プラカートの波が微風にふくらんだ。
モスクワ印象記 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
パーヴェル・パヴロヴィッチが、茶をのんで窓越しに並木道の菩提樹リーパの梢を眺めている間に、ナースチャはニッケル盆にコップと薬罐とバラ模様の急須をのせ、食堂の隣室の戸をたたいた。
赤い貨車 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
並木通りには菩提樹リーパの葉のかずほど赤坊がいた。