荼吉尼天堂だきにてんどう)” の例文
だが二人は、そのまま寝屋ねやの房へは近づいても来ず、彼方の荼吉尼天堂だきにてんどうの縁へ、酔った体を投げ出しあった。そして何やら、首と首とを寄せあっている。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
物蔭にしゃがんでいた御厨ノ伝次は、這うように、そこの荼吉尼天堂だきにてんどうの横を、す退り始めた。そして堂裏の遠くを廻り、なに食わぬ顔して、寝屋ねやの房にもどって寝ていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……それを、私はゆうべ、わが子の病気平癒の祈願のため、あの妙厳寺の荼吉尼天堂だきにてんどう夜籠よごもりしているうちに、夢ともうつつともなく、御堂みどうの内で、つい聞いていたのでした。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)