空文くうぶん)” の例文
この調子なら、蠅男もこの一画に閉じこめられたまま、あの殺人宣言はむなしく空文くうぶんに終ってしまうことかと思われた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
実際またそうでもしなければ、残金二百円云々うんぬん空文くうぶんおわるほかはなかったのでしょう、何しろ半之丞は妻子は勿論、親戚さえ一人ひとりもなかったのですから。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「それがどうもよくわかりません。“船名ハ——”とまでは、打ってきましたが、そのあとは空文くうぶんなんです。符号がないのです。どうも変ですね。なぜ船名をいわないのでしょうか」
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)