碧色へきしょく)” の例文
青葉の杜を見ても、碧色へきしょくの空を見ても何となく、こう恋人にでも待たるるような、苦しいかと思うと悲しいような、又物哀れな慕わしげな気持のする頃であった。
運転手は踊躍こおどりした。ものすさまじい爆音を立てると、さすがに驚いたように草が騒いだ。たちまち道を一飛びに、鼠は海へ飛んで、赤島に向いて、碧色へきしょくの波に乗った。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下り坂の速力早く、好い気もちになって窓からのぞいて居ると、空にはあらぬ地の上の濃い碧色へきしょくがさっと眼にうつった。野生千鳥草の花である。彼は頭を突出して見まわした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)