奉公人達も早寢をして、今朝はいつも早起きの甲子松が、雨戸を開けて庭を覗くと、——主人が崖下の裏庭に轉げてゐたんださうで。
奉公人たちも早寝をして、今朝はいつも早起きの甲子松が、雨戸を開けて庭を覗くと、——主人が崖下の裏庭に転げていたんだそうで。
「お前は自分のしたことが恐ろしかつた。お孃さんにせがまれて明神下へ來たり、勘三郎や甲子松が疑はれると、あわててそれも助けてやつた」
「お前は自分のしたことが恐ろしかった。お嬢さんにせがまれて明神下へ来たり、勘三郎や甲子松が疑われると、あわててそれも助けてやった」
現場を一と通り調べた平次は、お勝手口のあたりを丁寧に見て廻り、今朝甲子松が開けたといふ雨戸を指摘させました。