爽々すが/\)” の例文
起された時は、夏の朝らしい爽々すが/\しい陽が庭に一杯満ち溢れてゐた。彼は夢中で湯槽へ飛び込んで、ツと胸を撫で降した気になつたのだ。
明るく・暗く (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
何う考へてもあれは爽々すが/\しく愉快で、未だに眼を閉ぢると、眼蓋の裏にあの妙なる踊り子の幻が髣髴とする位ゐなのである。
川蒸気は昔のまゝ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
それどころか、彼女が彼に対する約(戯れだと彼は思つてゐたし——)を自ら破つて、嫁いで行つた時などは寧ろ爽々すが/\しさを覚えたことを思ひ出すことが出来た。
小川の流れ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
フロラの部屋の窓には爽々すが/\しい朝陽が綺麗に当つてゐた。グリツプは、窓台の上の籠で陽を浴びてゐた。
鸚鵡のゐる部屋 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
有無を云はさずひツ捕へられはしないか? ——さう思ふと彼は反つて爽々すが/\しい気がしたが
村のストア派 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
馬鹿な日を送つたので疎かになつた仕事を取り返すべく、爽々すが/\しく胸を踊らせながら——。
熱い風 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
細君は、彼の案外な自信の強さに力を得て、何かゝら放たれたやうな爽々すが/\しさを感じてゐた。たゞ樽野は、仕事のはかどり憎さに伴れて冒頭の如き「何故——」を呟く自分を惨めに思つた。
鶴がゐた家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
爽々すが/\しい陽の光りが、凪いだ水の上に銀色に映えてゐた。
夏ちかきころ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
そして、自分が爽々すが/\しい大人であることを悦んだ。
山を越えて (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
浴びて帰るのは至極爽々すが/\しいことだらう。——亭主、さつき帰つたシリア人は、この店先きには何時も斯んなに具合の好い雨が降るので、それで、朝方までも斯んなに客がたて込んでゐるんだらう……なんて呟いてゐたよ。
山彦の街 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)