無上むしやう)” の例文
闇が彼の身のまはりにひしめいて居た。それは赤や緑や、紫やそれらの隙間のない集合で積重ねてあつた、無上むしやうに重苦しい闇であつた。
油をかけた緑玉の様な雙の翊を無上むしやうに振い動かしながら、絶大な海の力に対して、余り悲惨な抵抗を試みて居るのであった。
かんかん虫 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ゆくりない日が、半年の後に再来て、姫の心を無上むしやうの歓喜に引き立てた。其は秋彼岸の中日、秋分の夕方であつた。姫は曾ての春の日のやうに坐してゐた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)