渡左衛門尉わたるさえもんのじょうと云う名は、今度の事に就いて知ったのだが、男にしてはやさしすぎる、色の白い顔を見覚えたのは、いつの事だかわからない。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それには渡左衛門尉わたるさえもんのじょうを、——袈裟けさがその愛をてらっていた夫を殺そうと云うくらい、そうしてそれをあの女に否応いやおうなく承諾させるくらい、目的にかなった事はない。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)