旧字:澤山
毎日それが続いて、たとえばおからの煮ものを持って行くにしても、それには沢山海老がはいっていると、近所のひとびとは喧しく取沙汰した。
「……わいも今まで沢山の芸子衆を乗せたが、あんな綺麗な子を乗せたことがない、種はん、ほんまに綺麗やったぜエ——と、言うたやないか」
滝の前の茶店で大福餅をたべさせながらおみよ叔母は、叔母さんの香典はどこの誰よりも一番沢山やさかいお前達は肩身が広いと聴かせ、そしてぽんと胸をたたいて襟を突きあげた。
「そない照れんかてええやないの。ああ、あんたはええな。質屋いうたら、あんた、お金が無かったら、でけん商売やろ? もうじきあんたはお金持ちの奥さんや。ええなあ。うち、入れに行ったら、沢山貸してや。いまから頼んどくし」