鼈四郎は病友がいった通り、彼が死んでからも顔を描き上げようとはしなかった。隻眼をすがめにしてにらみながら哄笑こうしょうしている模造人面疽もぞうじんめんその顔は、ずった偶然によってかえって意味を深めたように思えた。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)