タンネ)” の例文
きめて置いた室は、廊下つづきの裏二階で、アーレの上に、ハルデルのタンネが窓に近い。差しあたっての相談もあるし、馬鹿話しなんて余裕は、薬にしたくもない。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
昨日から顏なじみのタンネの樹林がまた道の兩側に黒黒と列んで、下の芝草も手入をしたやうに美しく、ブロッケンのやうに大きな岩石が散亂してないので、いかにも地貌の柔和な印象を與へられた。
キフホイザー (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
原から、上はタンネ落葉松レルヘの交じった密林になって、頭の上の方に見える雪のそばまで、景色に変りはなさそうだ。草の上に寝ころんで、煙草をふかしながら見まわした。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
しばらくは平坦な溪谷の道を走つてゐたが、一つの小さい村を通ると右に折れて、また山道になり、タンネの森と濶葉樹の森の交錯が私たちの目を喜ばせた。キフホイザーの山越にかかつたのである。
キフホイザー (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
麓は落葉松やタンネ唐檜フィヒテの、空をしのぐ密林となって、その枝ごしに、または梢の上に、ピッツ・アルブリス Piz Albris, 3166m. や、ベルニナの裾に
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
拱門から附近の山山のタンネの茂みが透いて眺められるのが美しかつた。
キフホイザー (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)