杓子しやもじ)” の例文
などと、お靜が杓子しやもじを持つて追つ驅けた時は、二人の姿はもう、お臺所から金澤町の角へ消え込んで居りました。
「前の晩、與之助がお勝手へ忍び込んで、味噌をいゝ加減杓子しやもじに取りわけて、その中に毒を仕込んだのだよ。疑ひはお夏へ行くにきまつてゐるぢやないか」
「今朝、味噌汁を拵へるとき、お夏さんは小出しのかめから、杓子しやもじで味噌を取つて鍋へ入れたことだらうな」
中低なかひく杓子しやもじのやうな顏、色白でノツペリして、下唇が突き出して、本人は一かど好い男のつもりなのが、言葉の端々にまで現はれて、まことに以てやりきれない人間です。
朝の味噌汁の中に、猛毒を仕込むためには、それが一番手輕で間違ひのない方法で、それをお六の親切と解し、杓子しやもじに入れてあつただけの味噌で汁を作つたに間違ひはないでせう。