暗合あんごう)” の例文
この出来事はさすがにうそであるとはいえない。まったく驚くべき暗合あんごうで、彼のこころに強い印象を残したのも無理はない。
わざと、部隊を離れて、ほかに渡る戦友の影もない下流の水路を選んだのも、約束したように、ふたりの考えが暗合あんごうした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お延の所作しょさに対して突然不快を感じ出した彼も、そこまでは論断する事ができなかった。しかし全く偶然の暗合あんごうでない事も、彼に云わせると、自明の理であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
苦力の五郎十郎が暗合あんごうしているには驚きました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
余は平凡ながらこの暗合あんごうを面白く眺めつつ、誰が打ってくれたのだろうと考えて差出人の名前を見た。ところがステトとあるばかりでいっこうに要領を得なかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「みんな去年の暮は暗合あんごうで妙ですな」と寒月が笑う。欠けた前歯のうちに空也餅くうやもちが着いている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)