そばだ)” の例文
ジュセッポの家で時ならぬ嵐が起って隣家の耳をそばだてさせる事も珍しくない。アクセントのおかしいイタリア人の声が次第に高くなる。
イタリア人 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
病理的な情熱の破船状態だと云います。その時は、必ず極端に倫理的なものが、まるで軍馬のように耳をそばだてながら身を起してくる——と申されます。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
が、今日はいつまで耳をそばだてていても、遂に、その声は聞こえて来ない。今は山茶花の花盛りである。その花の色が、内障子にまっている磨ガラスの花模様の透しを通して、赤く映っている。
日を愛しむ (新字新仮名) / 外村繁(著)