此処ここは道が丁字路になっている。権現前から登って来る道が、自分の辿たどって来た道を鉛直に切るところに袖浦館はある。木材にペンキを塗った、マッチの箱のような擬西洋造まがいせいようづくりである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)