慈悲忍辱じひにんにく)” の例文
慈悲忍辱じひにんにくを説く聖者が、今、衆人環視の中で自分の子を捕えて食った。そして、食い終わってから、その事実をも忘れたるがごとくに、ふたたび慈悲の説を述べはじめた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しばらく和尚とともに念仏をとなえて、やがて顔をあげると、如来の慈悲忍辱じひにんにく光顔こうがんは、一層柔和の色を増し、暴風雨にも動じたまわぬ崇高さが、かえって法信を夢のような恐怖の世界に引き入れた。
死体蝋燭 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)