兇賊きようぞく)” の例文
左傷の五右衞門——それはまことに恐るべき兇賊きようぞくでした。暮から活動を始めて、この三月末までには、神田から下谷、淺草、本郷へかけて、十五六軒も荒したことでせう。
さうした讀書から自然に覺えた探偵ごつこ、自分の友達の多少魯鈍ろどんなのを兇賊きようぞくに仕立てたりして、それをわら繩で縛り上げる敏腕な探偵は、私の少年時代のある時の姿だつたから……。
探偵小説の魅力 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
恐ろしい勢ひで八丁堀の組屋敷へ駈込みうつたへをしたのは、目のさめるやうな美女——それは一しきり江戸中を騷がせた兇賊きようぞく黒雲の彌十郎の娘。おいくといふ二十四五の凄い女でした。
兇賊きようぞくは何んの變哲もない小男で、黒い覆面をしたつきり、町人風の小氣のきいた樣子で、大抵よひのうちに入り、往來がまだ賑やかなうちに、何處ともなく逃げうせるのが特徴とされて居ります。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)