「フン、まだあるのか」と熊城は、つばきで濡れたたばことともに、吐き出すように云った。「もう角笛や鎖帷子かたびらは、先刻さっき人殺し鍛冶屋ヴェンヴェヌート・チェリニで終りかと思ったがね」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)