中野輝一なかのきいち)” の例文
中野君がかような人であったなら、出鼻をはたかれてもさほどに口惜くやしくはなかったろう。しかし高柳君の眼に映ずる中野輝一なかのきいちは美しい、賢こい、よく人情を解して事理をわきまえた秀才である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
道也先生はやがてふところから例の筆記帳を出して、原稿紙の上へ写し始めた。はかまを着けたままである。かしこまったままである。袴を着けたまま、かしこまったままで、中野輝一なかのきいちの恋愛論を筆記している。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)