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點滴
岩を
削つて
點滴る
水は、
其の
火の
見階子に、
垂々と
雫して、
立ちながら
氷柱に
成らむ、と
冷かさの
身に
染むのみ。
何處に
家を
燒く
炎があらう。
紅も
笹色の
粧を
凝して、
月光に
溶けて
二葉三葉、たゞ
紅の
點滴る
如く、
峯を
落ちつつ、
淵にも
沈まず
飜る。
「さあ、もう
時間よ」と
注意したとき、
彼は
此點滴の
音を
聞きながら、もう
少し
暖かい
蒲團の
中に
温もつてゐたかつた。けれども
血色の
可くない
御米の、
甲斐々々しい
姿を
見るや
否や