さが)” の例文
決して一直線に付いて居るのでなくって山のうねうねとねくって居るところをめぐり廻って、あるいはあがりあるいはさがって行きますので
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
二上山の男岳おのかみ女岳めのかみの間から、急にさがって来るのである。難波から飛鳥あすかの都への古い間道なので、日によっては、昼は相応な人通りがある。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
勿論もちろん旋風つむじかぜつねとて一定いつてい方向ほうかうはなく、西にしに、ひがしに、みなみに、きたに、輕氣球けいきゝゆうあだか鵞毛がもうのごとく、天空てんくうあがり、さがり、マルダイヴ群島ぐんたううへなゝめ
自分は急に陰気になって下へさがる、とうてい交際つきあいはできないんだと思うと、背中と胸の厚さがしゅうと減って、臓腑ぞうふうすぺらな一枚の紙のようにしつけられる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あがったとか、さがったとか言って、売ったり買ったりする取引場の喧囂けんごう——浮沈うきしずみする人々の変遷——狂人きちがいのような眼——激しくののしる声——そういう混雑の中で、正太は毎日のように刺激を受けた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二上山の男嶽をのかみと、女嶽めのかみとの間から、急にさがつて来るのである。難波なにはから飛鳥あすかの都への本道になつて居るから、日によつては、相応な人通りがある。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
嬉しさはどこまで行っても嬉しいに違ない。だから理窟りくつから云うと、意識がどこまでさがって行こうとも、自分は嬉しいとのみ思って、満足するよりほかに道はないはずである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時々に過ぎる雲のかげりもなく、晴れきった空だ。高原をひらいて、間引いたまばらな木原こはらの上には、もう沢山の羽虫が出て、のぼったりさがったりして居る。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
鳥打帽のひさしまたいで、脳天まで届いたと思う頃また白眼がじりじり下へさがって来た。今度は顔を素通りにして胸からへそのあたりまで来るとちょっと留まった。臍の所には蟇口がまぐちがある。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
高原を拓いて、間引まびいた疎らな木原こはらの上には、もう沢山の羽虫が出て、のぼつたりさがつたりして居る。たつた一羽の鶯が、よほど前から一処を移らずに、鳴き続けてゐるのだ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
山腹の紫は、雲となってたなびき、次第次第にさがる様に見えた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)