金文字きんもじ)” の例文
そのホテルの石は、みどり色の霧でしっとりれていた。石の門の上に、金文字きんもじでほそく、HOTEL SWITZERLAND と彫り込まれていた。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ニールスは、金文字きんもじで書いた大きなはたがヒラヒラしているのを見て、すぐにそれとわかりました。その人たちは、いつまでもいつまでも、歌っていました。
後ろの丁字街の突き当たりには、破れた匾額へんがくがあって「×亭口ていこう」の四つの金文字きんもじ煤黒すすぐろく照らされていた。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
外から中が見られるガラスのかんをつくり、その中に姫のからだをねかせ、その上に金文字きんもじで白雪姫という名を書き、王さまのお姫さまであるということも、書きそえておきました。
学術雑誌で名前を知っている偉い博士たちの研究室が、納骨堂のうこつどうの中でもあるかのように同じ形をしてうちならび、白い大理石の小さい名札の上にその研究室名が金文字きんもじしるされてあった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
宗助そうすけはしばらく其前そのまへつて、あかあをしま模樣もやううへに、あざやかにたゝんである金文字きんもじながめた。表題へうだい意味いみ無論むろんわかるが、つて、なかしらべてやうといふ好奇心かうきしんはちつともおこらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)