野差刀のざし)” の例文
引窓から白い月明りがしこんでいる下に、童子は、研桶とぎおけを据え、刃渡り一尺五、六寸の野差刀のざしを持って、一心にやいばをかけているのであった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鉄砲を持っている男は猟師りょうしらしいし、野差刀のざしを横たえているのは木樵きこりと見てさしつかえない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泥まみれな脚絆きゃはん穿き、一本の野差刀のざしを腰にぶちこんでいるが、丸っこい顔に、そそけ立つ髪の毛を、眼尻あがりに藁でつかね、背は五尺五寸に足るまいが、胸の肉づきといい
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まさかと、そうなってもまだ、幾分多寡たかをくくっていた伊織が、最初に敵の小手を切ったことに、すっかり自信をもったらしく、ぱっと野差刀のざしを振りかぶって、斬りつけて来た。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊織はとたんに、頭から水を浴びたような気がしたが、ここまで来ればもう自分の国のように気が強かったし、逃げてもだめだと思ったので、跳び退きながら、腰に帯びている野差刀のざしを抜きはらい
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊織は、左の手を、野差刀のざしつばの下から離さなかった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、腰の野差刀のざしを撫でる。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)