こん)” の例文
さうするとはたつゝとほちかはやしには嫩葉わかば隙間すきまからすくなひかりがまたやはらかなさうしてやゝふかくさうへにぽつり/\とあかるくのぞこん
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
僕は土蔵くらの石段に腰かけていつもごと茫然ぼんやりと庭のおもてながめて居ますと、夕日が斜に庭のこんで、さなきだに静かな庭が、一増ひとしお粛然ひっそりして、凝然じっとして
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
おこす共起はせまじ幸ひ此茶店にて夜を明さんとつぶやきつゝ茶店ちやみせに入てお粂が通夜つやしてをる共知らず上りこんだり扨もお粂は大膽不敵だいたんふてきの女なれば先方の心は知らざれ共くらさはくらいき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仲々うまたくんだと思いましたが老人を殺せば倉子の亭主は疑いを受けて亡き者に成り其上老人の財産は倉子にころがこんで倉子は私しの妻に成ると云う趣向ですから石一個ひとつで鳥二羽を殺す様な者でした
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
大地は雪に蔽われて、死んだように寂然ひっそりしている。彼女はいきなりその素足を氷のように冷たい、柔かな粉雪のなかへ一歩踏みこんだ。と、傷のように痛くうずく冷感が、心臓のところまで上って来た。
初雪 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
... 満さんとあの娘っ子とがふざけた真似まねして遊んでいるだ」とたき付ける言葉の仰山ぎょうさんなるにお代嬢はムラムラと顔の色変りて額より二本のつのはえんばかり「あんだと、満さんがあの娘っ子とふざけていると。迎いにもいかねいでらちもねいこんだ。どうしてやるべい」下女「あの家へ怒鳴どなこんで満さんを ...
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
願ひ奉つると平伏へいふくして居るゆゑ淡路守殿如何に彦兵衞其方へ申こんだる事でも有るかと尋ねられしかば彦兵衞這出はいいで勘兵衞儀不如意ふによいつき金子出來兼當分の内問屋より右の品借受かりうけおつ返濟へんさい致さんと申し候に付私し儀問屋に借金しやくきんも是ありせめて當金の十五兩もつかはさねば出來難きむねことわり候と申立るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)