いまし)” の例文
塔はまだ厳重にやらひを組んで人の立ち入りをいましめてあつた。でも拘泥することを教へられて居ない姫は、何時の間にか塔の一重の欄干によりかゝつて居る自分に気がついた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
そのほか一切の男子の者を構へて近づくる事なかれと固くいましめて立ち去り給ひぬ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
されど今の御疑ひ一〇二僻言ひがごとならぬは、大師は神通自在じんつうじざいにして一〇三隠神かくれがみえきして道なきをひらき、いはほるには土を穿うがつよりもやすく、大蛇をろち一〇四いましめ、化鳥けてう一〇五奉仕まつろへしめ給ふ事
さらば逍遙子は空間にいましめられ、時間にしばられ、はては論理にくるしめられむ。衆理想皆是なりとは、逍遙子え言はざるべし。彼は衆理想の中に於て論理にたがひたるものを發見すべければなり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
すなわち他事を以て溥洽をいましめて、しかして給事中きゅうじちゅう胡濙こえいに命じてあまねく建文帝を物色せしむ。これを久しくして得ず。溥洽してつながるゝこと十余年、ここに至りて帝道衍の言をもって命じて之をいださしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
塔はまだ、厳重にやらいを組んだまま、人の立ち入りをいましめてあった。でも、ものに拘泥することを教えられて居ぬ姫は、何時の間にか、塔の初重しょじゅうの欄干に、自分のよりかかって居るのに気がついた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)