破片かけ)” の例文
ちょっとした石瓦いしかわらのような仏様の破片かけでもあると必ず右へしてまわって行く。それは決して悪い事ではない。これには因縁いんねんがあります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
鶏が茶碗の破片かけだの小石だのを食べて食物をこなすように胃の機械的作用が食物を砕く時中に固いものが少し交っているとかえってよくこなれます。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
これも後には底抜けて、その破片かけは蒲生家にありとぞ聞えし、俵は米を取れども耗らず、かても乏しき事なし、それ故に名字を改め、俵藤太とぞ申しける。
井戸端ゐどばたをけにはいもすこしばかりみづひたしてあつて、そのみづにはこほりがガラスいたぐらゐぢてる。おつぎはなべをいつもみがいて砥石といし破片かけこほりたゝいてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それから星の破片かけの落ちたのを拾って来て、かろく土の上へ乗せた。星の破片は丸かった。長い間大空を落ちているに、かどが取れてなめらかになったんだろうと思った。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まさかは、摺鉢すりばち破片かけかともはなかつた。が、それは埴輪はにわ破片はへんだらうとうてうてた。
その男の髯もぢやな顔は、もう二週間以上、よく百姓たちが剃刀を持ち合はせてゐないところから髯を剃るのに使ふ、あの鎌の破片かけも当てられてゐないことを物語つてゐた。
「確かです。破片かけが散って居りましたり、外に硝子のこわれた所はありませんでしたから」
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
草木の葉はぐんなりと萎れて、ただ山中一杯にころがっている岩のかけらや硅石の破片かけが、燃えるような日の光りに焦がされてチカチカと、勢いよく輝いているばかりであった。
恨なき殺人 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
それから、あの硝子ガラス破片かけです。
暗夜の格闘 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
死の底に髑髏の破片かけもなかりけり
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
そがてのひらに猫眼石の破片かけときらめく
破片かけおほきくかじりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「死んだら、めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片かけ墓標はかじるしに置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。またいに来ますから」
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)