眼色めつき)” の例文
そして恰も、わしを励ますやうに、最も神聖な約束に満ちた眼色めつきをして見せるのである。彼女の眼が詩なら彼女の一瞥は正に唄であつた。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
くだんの婦人は落着払い、そのひややかなる眼色めつきにて、ずらりと四辺あたりを見廻しつ、「さっさとしないか。おい、お天道様は性急せっかちだっさ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母親は息子むすこのこのごろどうかしているのをそれとなく感じて時々心を読もうとするような眼色めつきをして、ジッと清三の顔を見つめることがある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ミハイロの罪の無い笑声や、人の好ささうな眼色めつきが皆の気に入つて、なぶらずに真面目に事情わけを聞出したから、仕事をさせて貰ひたいのだといふと、そんなら己達おれたちの跡にいて来なと云ふ。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
追付くと、又逃げて又其眼色めつきをする。こうして巫山戯ふざけながら一緒に帰る。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
なか何事なにごと不思議ふしぎなり、「おい、ちよいと煙草屋たばこやむすめはアノ眼色めつき不思議ふしぎぢやあないか。」とふはべつツあるといふ意味いみにあらず
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
町の若い娘たちの眼色めつきをも読み得るようにもなった。恋の味もいつか覚えた。あるデザイアに促されて、人知れず汚ない業をすることもあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
よんどころなくほたほたしながら頭をでて遣るだけで不承ふしょうして、又歩き出す。と、ポチも忽ち身をくねらせて、横飛にヒョイと飛んで駈出すかと思うと、立止って、私のかおを看て滑稽おどけ眼色めつきをする。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
やさしい眼色めつきと、にこにこした円満な顔には、初めて会った時から、人のよさそうなという感を清三の胸に起こさせた。この人にはへだてをおかずに話ができるという気もした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
と答うれば、戸をひらきて、医師とともに、見も知らぬ男り来れり。この男は、扮装みなり、風俗、田舎漢いなかものと見えたるが、日向ひなたまばゆき眼色めつきにて、上眼づかいにきょろつく様、不良よからやからと思われたり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
全く眼色めつきのような気象で、勝気で、鋭くて、く何かに気の附く、口も八丁手も八丁という、一口に言えば男勝おとこまさり……まあ、そういったたちの人だったそうな、——私は子供の事で一向夢中だったが。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
薄痘痕うすあばたのある、背の高い男で、風采は何所どことなく田舎臭ゐなかくさいところがあるが、其の柔和な眼色めつきうちには何所どことなく人を引付ける不思議の力がこもつて居て、一見して、僕は少なからず気に入つた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
つけられた方は、呆れるより、いきなりなぐるべき蹴倒し方だったが、かたわらに、ほんのりしている丸髷まげゆえか、主人の錆びたびょうのような眼色めつき恐怖おそれをなしたか、気の毒な学生は、端銭はした衣兜かくし捻込ねじこんだ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)