かへり)” の例文
かような場合ばあひかへりみると、屋外おくがい避難ひなんしてなる場合ばあひは、わづか二三秒にさんびよう軒下のきしたはなれることが出來できるような位置いちにあるときにかぎるようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
エリザは、さつきから、食堂のドアの陰で、息をひそめて、この光景を眺めてゐましたが、急に、自分の姿をかへりみて、恥らふやうに、そこを立去りました。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
さげ扨申されけるは越前かく夜中やちうをもかへりみず推參すゐさん候は天下の御大事に付中納言樣へ御願ひ申上度儀御座有ござあつての儀なり此段御披露ひろうたのみ存ずるとぞのべられたり主税是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
新婚當時しんこんたうじ四五年しごねん故郷こきやうかへりみなかつた時分じぶん穗科閣下ほしなかくかは、あゝ糠鰊こぬかにしんひたいな、と暫々しば/\つて繰返くりかへした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかもかれしまらない人間にんげんとして、かく漂浪へうらう雛形ひながたえんじつゝある自分じぶんこゝろかへりみて、もしこの状態じやうたいながつゞいたらうしたらからうと、ひそかに自分じぶん未來みらいあんわづらつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
竹煮草たけにぐさにしろくふくこの日でり堪ふべしや我もかへりみなむとす
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
自分じぶんかへりみるときないのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
すゝかしらさげて申上らるゝやうおそれながら天下の御大事に付夜中をもかへりみず推參すゐさん候段恐入おそれいり奉り候御病中もいとはせ給はず御目通めどほり仰付おほせつけられ候段有難き仕合に存じ奉ると申上らる此時綱條卿には御褥おんしとね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御早おはやう」と挨拶あいさつした。かれ今朝けさまたとくに參禪さんぜんましたのちうしてあんかへつてはたらいてゐたのである。宗助そうすけはわざ/\おこされてもなかつた自分じぶん怠慢たいまんかへりみて、まつたきまりわるおもひをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)