うぶ)” の例文
堅気の田舎の家庭から巣立ちして来たばかりのお今のうぶな目には、お増の不思議な生活が、煩わしくもみじめらしくも見えるのであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
子供のやうにやんちやで、うぶで、一本気で、手障てざはりは冷たく静かなやうだが、底には高い潜熱とつよい執着をもつてゐた。
二人とも丁度今の米子と市子のように幼い頃から春風楼に育てられて昨年ようやく一人前になったばかりのまだ十八の、普通ならうぶな娘の年頃であった。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
花柳の巷にまた一つことわざがある「玄人が素人に還ったほどうぶなものはない」と。わたしはこれだ。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
まことなさけの有りそうなお方と世間知らずのうぶな娘もぞっと身に恋風こいかぜに、何処どこの人だか知れませんがい息子さんだと思いめ、ぼんやりとして後姿うしろすがたを見送って居りました。
そしてその纖毛の先から更に無數のうぶ毛が光り出し、煙のやうにかすんで見える。
散文詩・詩的散文 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
「今日お前はいつものよそゆきと違って大変ちょくうぶ身装なりをしているねえ」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
色々いろんな事を知つた女が、うぶで、無垢な昔馴染の男に出会つた時の事で、女はそんな時には、きまつたやうに頭のを掻き/\、その後昵懇なじみになつた男の数を懐中ふところみながら
うぶな調子でいって、八畳の座敷の方に私を案内した。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)