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瑕
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きず
ふりがな文庫
“
瑕
(
きず
)” の例文
その鈍いおちつき、救われないひとりよがり——AH! 私のろんどんは
瑕
(
きず
)
だらけな
緩動映画
(
スロウ・モウション
)
の、しかもやり切れない長尺物だ。
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
彼女は富子と同い年の廿四で、眼の細いのと髪の毛のすこし縮れているのとを
瑕
(
きず
)
にして、色白の品の好い立派な女振りであった。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「それは嘘です。裏に肉眼で見えない程の
瑕
(
きず
)
があります。同じ瑕の石が二つある筈がありません。これは確かに盗んだものです」
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あげてやらう。暗いのは玉に
瑕
(
きず
)
だが、久々に健康を祝すとしやうか。小田原は蒲鉾ときまつてゐるが、この節は売つてゐるかね
朴水の婚礼
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
律義者
(
りちぎもの
)
の主翁は
己
(
じぶん
)
の家の客を恐ろしい処へやって、もし万一のことがあっては
旅籠
(
はたご
)
としての
瑕
(
きず
)
にもなると思ったので
強
(
し
)
いて止めようとした。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
清廉潔白
(
せいれんけっぱく
)
な士道の君主として、今日まで、公私の
行状
(
おこない
)
に、
些細
(
ささい
)
な
瑕
(
きず
)
も持たない人であった。顔をうなずかせて、すぐに云った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勿論お嬢は
瑕
(
きず
)
のない玉だけれど、
露出
(
むきだ
)
しにして河野家に御覧に入れるのは、平相国清盛に招かれて月が顔を出すようなものよ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「どうでしょう、万一娘に
瑕
(
きず
)
でもつけられるようなことになると困りますから、至急□□市へ出張して調べて貰えませんか」
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
それ小児の生れて二、三歳より六、七歳に至るまで、その質たる純然無雑、
白玉
(
はくぎょく
)
の
瑕
(
きず
)
なきがごとく、その脳中清潔にして、いささかの汚点なし。
教育談
(新字新仮名)
/
箕作秋坪
(著)
庭作りとして、高貴の家へ出入していたお島の父親は、彼が一生の
瑕
(
きず
)
としてお島たちの母親である彼が二度目の妻を、
賤
(
いや
)
しいところから迎えた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
もはや一生お師匠様のお顔の
瑕
(
きず
)
を見ずに済むなり、まことによき時に盲目となり
候
(
そうろう
)
ものかな、これ必ず天意にて
侍
(
はべ
)
らんと。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もしゆくすえ若旦那さまのお名に
瑕
(
きず
)
のつくようなことでもございましたら、死んでもお詫びはかなわぬと存じまして……
日本婦道記:小指
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ほんによ、さうなつた日にやこいつの御蔭で、街道筋の
旅籠屋
(
はたごや
)
が、みんな
暖簾
(
のれん
)
に
瑕
(
きず
)
がつくわな。その事を思や今の内に、ぶつ殺した方が人助けよ。
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と助七は才槌を
揮
(
ふ
)
り上げ、力に任せて何処という嫌いなく続けざまに仏壇を打ちましたが、板に
瑕
(
きず
)
が付くばかりで、
止口
(
とめぐち
)
釘締
(
くぎじめ
)
は少しも
弛
(
ゆる
)
みません。
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
こうまで源氏に似ておいでになることだけが玉の
瑕
(
きず
)
であると、中宮がお思いになるのも、取り返しがたい罪で世間を恐れておいでになるからである。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
べつに身体に
瑕
(
きず
)
がつくわけでもなし、おもしろおかしい日がつづいたら本人もさぞ気がまぎれてよかろうではないか——こうお艶にすすめてみると
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
子供たちは酸っぱいと言って軽蔑し、あの香気の素晴しさを説いて、皮ごと食えと教えても決して食わない。なるほど実の酸っぱいのが玉に
瑕
(
きず
)
である。
九年母
(新字新仮名)
/
青木正児
(著)
容貌
(
きりょう
)
は
佳
(
よ
)
し性質もこんな温厚な娘だったが、玉にも
瑕
(
きず
)
の例でこの娘に一つの難というのは、肺病の血統である事だ。
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
其處へ來合せた友白は饅頭を投り出して、茶碗を掻い抱くやうに、右から左から、ためつすかしつ、
鵜
(
う
)
の毛で突いた程の
瑕
(
きず
)
も見落さずと調べて居ます。
銭形平次捕物控:003 大盗懺悔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
……もちろん、写真もあれば、居どころも知っているが、新聞などでワイワイ騒がれちゃあの娘の身上に
瑕
(
きず
)
がつく。
キャラコさん:06 ぬすびと
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
晴れた日は全山を玲瓏と人の眼に突付けて、
瑕
(
きず
)
もあらば、看よ、看よと、いってるような度胸のよい山の姿である。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
活々
(
いき/\
)
とした赤い健康さうな可愛い形をした唇、
瑕
(
きず
)
のない揃つた輝いた齒、小さな
笑
(
ゑ
)
くぼのある顎、
房々
(
ふさ/\
)
としたあり餘る程の髮の
裝
(
よそほ
)
ひ——短かく云へば
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
眉目
(
びもく
)
端正な顔が、迫り
視
(
み
)
るべからざる程の気高い美しさを具えて、
新
(
あらた
)
に浴を出た時には、
琥珀色
(
こはくいろ
)
の光を放っている。豊かな肌は
瑕
(
きず
)
のない玉のようである。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
単純で実直だとあまりに自称しているのは
瑕
(
きず
)
だったが、しかし多とすべきは、実際彼が単純で実直なことだった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
感傷的な気分はあっても、読んでみて、それがすこしも
瑕
(
きず
)
にはならない、好い歌として歌いあげられる。情緒と悟性との調和がそこに見られるからである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
人殺しの罪人でさえも官費で弁護士がつけられる世の中に、効はあっても罪のない論文提出者は八方から虫眼鏡で
瑕
(
きず
)
を捜され叱責されることになるのである。
学位について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
弓矢取りは、年頃、日頃、いかなる功名を立てましょうとも、最後に不覚をとれば、その身に永久に
瑕
(
きず
)
がつきます。御体も疲れ、馬もひどく弱っております。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
一味を引っ捕えて調べるのは、訳のない話ではありますが、それでは柏屋に
瑕
(
きず
)
がつくし、呪いとあってはお島の命が、その間に取られてしまうかもしれない。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
承暦
(
しょうりゃく
)
二年十月下旬、山徒これを
叡山
(
えいざん
)
へ持ち行き撞けども鳴らねば、怒りて谷へ抛げ落す、鐘破れ
瑕
(
きず
)
つけり、ある人当寺へ送るに、瑕自然愈合、その痕今にあり
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「変な気などにおなりになってはいけやせん、その変な気になりなさるのが、殿様の玉に
瑕
(
きず
)
なんでげす」
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その理由は、みっちゃんという人物が元来大阪、京都で育っている人間であるため、海苔選定にはどうも目の利かないところがあって、玉に
瑕
(
きず
)
というところである。
握り寿司の名人
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
あの人も、少し高慢なところが、
瑕
(
きず
)
ですわ。もう、少し素直だとほんとうにいい人なんですけれど。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼女たちは彼に誘惑されることを待ち、しかし、口では、アパート一番の好い男であるが、誰でも構はず関係するなんて嫌なこつた、それが玉に
瑕
(
きず
)
だなぞと云つてゐる。
日本三文オペラ
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
用紙は我々のよりも厚く、もっとすべっこいように思われ、そして幾分よごれはしても必ず無
瑕
(
きず
)
で、我国の紙幣のように、すりへらされた不潔な状態を呈したりしない。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
悔
(
くい
)
の
八千度
(
やちたび
)
その甲斐もなけれど、
勿躰
(
もつたい
)
なや父祖累代
墳墓
(
みはか
)
の地を捨てゝ、養育の恩ふかき伯母君にも
背
(
そむ
)
き、我が名の珠に恥かしき
今日
(
けふ
)
、親は
瑕
(
きず
)
なかれとこそ名づけ給ひけめ
雪の日
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「余り完全に出来たもんだから魔がさゝないように
一寸
(
ちょっと
)
瑕
(
きず
)
をつけたという伝説になっている」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だがカルーゾーにとって玉に
瑕
(
きず
)
だったことは、そのでっぷり肥った風貌でした。どんなに扮装をこらしても悲劇的な感じが出ませんでした。それにお芝居も決して上手ではなかった。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
難を言うと少し放っとき過ぎるくらいのものだけど、でもそれは、大した
瑕
(
きず
)
じゃァないでしょう。世話をやき過ぎるのよりは、やかな過ぎる方が、どっちかと言えば我慢し易いのよ。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
それでかういふ
言葉
(
ことば
)
が
利用
(
りよう
)
せられてゐるのです。けれどもどうしてもほとゝぎす
鳴
(
な
)
くやといふと、ほとゝぎすが
鳴
(
な
)
いてゐる
實際
(
じつさい
)
の
樣子
(
ようす
)
が
浮
(
うか
)
びます。これがこの
歌
(
うた
)
の
少
(
すこ
)
しの
瑕
(
きず
)
であります。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
それに
譃
(
うそ
)
を衝くと云ふ事がない。只此青年の立派な性格に
瑕
(
きず
)
を付けるのは例の激怒だけである。それが発した時は自分で抑制することがまるで出来なくなつて、猛獣のやうな振舞をする。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
忽
(
たちま
)
ち内務省からは風俗壊乱、発売禁止、本屋からは損害賠償の
手詰
(
てづめ
)
の談判、さて文壇からは引続き歓楽に哀傷に、放蕩に追憶と、身に引受けた看板の
瑕
(
きず
)
に等しき
悪名
(
あくみょう
)
が、今はもっけの
幸
(
さいわい
)
に
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「ふむ、そうかな。すると……手の大きいのは玉に
瑕
(
きず
)
というわけか。」
叔父
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
一つの
瑕
(
きず
)
をつけてしまったのである。
臨時急行列車の紛失
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
「大体、僕の計画にしてからが、九分どおりが運なんだ。妙に、度胸がいいのが玉に
瑕
(
きず
)
かもしらんが、これも千万年に一度、百億人に一人ど偉い馬鹿みたいなのが出たとき、言いだすような事だ。ねえ、まず吾々は九分通り、死ぬだろう」
人外魔境:10 地軸二万哩
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
瑕
(
きず
)
のない櫛に冠だ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
瑕
(
きず
)
のごと
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
表向きは頓死と披露して、妹のお縫に相当の婿を取れば、藤枝の家にも
瑕
(
きず
)
が付かず、親類縁者一同も世間に恥をさらさずに済むであろう。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あたしはあたしで、本家のためも思い、こいさんのためも思うて、
孰方
(
どっち
)
にも
瑕
(
きず
)
が付かんように苦心したつもりやってんわ
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二た刻もたって頃合を見て出した時は、すっかり冷たくなっていたのさ、後で気が付いて見たが、あの抽斗の奥には、可哀相にひどく掻き
瑕
(
きず
)
があったよ
銭形平次捕物控:015 怪伝白い鼠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「このお願いを聞いて下さらなければ、私は自害するほかはありませんし、加川の御家名にも
瑕
(
きず
)
がつくのです」
薊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
瑕
漢検1級
部首:⽟
13画
“瑕”を含む語句
瑕瑾
無瑕
瑕疵
疵瑕
無瑕瑾
微瑕
瑕物
瑜瑕
怪瑕
瑕理
薜瑕
瑩光明徹点瑕無
瑕金
瑕穢
瑕瑳
瑕瑜
古瑕
瑕我
彌子瑕
小疵瑕
...