狐格子きつねごうし)” の例文
ぎい……とふいに、白旗しらはたみや狐格子きつねごうしがなかからあいた。そして、むっくり姿をあらわしたのは、なんのこと、鞍馬山くらまやま竹童ちくどうであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それら、花にもうてなにも、丸柱まるばしらは言うまでもない。狐格子きつねごうし唐戸からどけたうつばりみまわすものの此処ここ彼処かしこ巡拝じゅんぱいふだの貼りつけてないのは殆どない。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小屋の前面は、張り子の岩組みと、一面の竹藪になっていて、その間から、狐格子きつねごうしの辻堂などが覗いている。さも物凄い飾りつけである。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
外の雨戸のほかに、この座敷には狐格子きつねごうしの丈夫な障子がまた一枚あります。その格子戸を立て切ると竜之助は、二箇所ほどピンと錠をおろしてしまいました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
渓流は細いが、水は清冽で、その辺は巨大な岩石が重畳ちょうじょうしており、くすまじって大榎おおえのきの茂っている薄暗い広場があって、そこにおあつらえ通りささやかな狐格子きつねごうしのついた山神さんしんほこらがある。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
こう祈って顔を上げて見ると、社殿の縁先狐格子きつねごうしの前に一人の老人が腰かけていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「こいつは狐格子きつねごうしゆわえる縁結びの紙じゃないか」
つかれた旅人でも寝ているのであろう、白旗しらはたみやの、蜘蛛くもだらけな狐格子きつねごうしのなかから、そのいびきはもれているのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ずっと谷底の古御堂ふるみどう狐格子きつねごうしの奥深くともれたもののごとく、思われた……か思ったのか、それとも夢路を辿たどる峠からのぞく景色か、つい他愛たわいがなくなる。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
荒れた野宮の狐格子きつねごうしの中に、一個の生物いきものうごめいていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこで、誓文神せいもんじん狐格子きつねごうしをふり仰いで、はてな! と少し立ち迷った。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)