湯漬ゆづけ)” の例文
佐久間玄蕃さくまげんば中入なかいり懈怠けたいのためか、柴田勝家しばたかついへしづたけ合戰かつせんやぶれて、城中じやうちう一息ひといき湯漬ゆづけ所望しよまうして、悄然せうぜんきたさうへとちてく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せめて一椀のかゆ湯漬ゆづけでも差上げる人があったらよいが、誰かお供の侍がお附き添い申していることか、それともお一人なのであろうか。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なるほど晩食ばんめしには少し間があった。宗助は楽々と火鉢のそば胡坐あぐらいて、大根のこうものみながら湯漬ゆづけを四杯ほどつづけざまにき込んだ。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最後のはしを取って、湯漬ゆづけをかろく三膳食べた。高窓には、もう夕星ゆうずつが見え、辺りには暮色が立ちこめてきた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
言葉の如く庫裡に入りてきふを卸し、草鞋わらぢを脱ぎて板の間に座を占め、寺男の給仕する粟飯を湯漬ゆづけにして、したたかに喰ひ終り、さて本堂に入りて持参の蝋燭を奉り、香を焚きて般若心経
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
豊後が理由わけを訊くと、先刻きつき忠成は道の通りがかりに、腹が空いて困るから、湯漬ゆづけなりと振舞つて欲しいと言つて、座敷に上り込み、主人も家来も負けず劣らず大食おほぐひをして帰つたあとだと解つた。
ただいま御家来衆から、お湯漬ゆづけをさしあげいとのおことばで、住職もくりやにはいって立ち働いておりまする。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗助そうすけ樂々らく/\火鉢ひばちそば胡坐あぐらいて、大根だいこんこうものみながら湯漬ゆづけを四はいほどつゞけざまんだ。それからやく三十ぷんほどしたら御米およねがひとりでにめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
十一日間の旅行中、いたるところの馳走攻めに、さすがの彼も、湯漬ゆづけに梅干一つぐらいな味が恋しかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともあれ一刻も早く慰めてやりたいと、あわただしく湯漬ゆづけを一わんかっこんで、宿の亭主に小舟を頼み、京橋口から猫間ねこま川をのぼって、小橋おばせ黙蛙堂もくあどううちせつけた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また自分は、当寺に療養中の半兵衛重治をちょっと見舞いに立ち寄ったのみにござれば、酒茶のもてなしなど無用。半兵衛と用談の後に、湯漬ゆづけなど馳走になればありがたいが
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いえいえ先ほどから水屋へお入りになって、お湯漬ゆづけの菜を手ずからお料理され、ただ今、御飯をいておられますゆえ、それのすみ次第、これへまかり出てお給仕をなさいましょう」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと、開け放たれているお広間をうかがうと、猿殿は、御舎弟の秀長様とおそろいで、御母堂の前に出られ、何か笑い興じながら、兵と同じような粗末なお菜で、湯漬ゆづけあがっているのだった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早めに、湯漬ゆづけをかきこみ、木賃を出た。外の道はまだ夕明りの頃おい。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、空腹であろうという仙石家の好意で、湯漬ゆづけきょうせられた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯漬ゆづけを一碗食べておきたいな。舟にのる前に」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう十分です。私は湯漬ゆづけを頂戴いたしたい」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに下婢かひ湯漬ゆづけの膳をはこんでくる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「待て、酒はすすめぬ。湯漬ゆづけなとどうじゃ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「粗末な湯漬ゆづけを支度しておきましたが」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯漬ゆづけを、もう一碗」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯漬ゆづけ。湯漬を」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)