海馬かいば)” の例文
海馬かいばの噴水の横から道をはすくともう白に赤の細いふちを取つたリラの店前テラスの張出した日覆ひおほひが、目の前でぱたぱた風に動いて居ました。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それは海馬かいばなどと言うべきものではあるまい。海馬は普通にあしかと唱えて、その四足は水掻きになっているのであるから、むやみに陸上を徘徊する筈がない。
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
く 地奈多の湯海に鄰れど人の世に近き処と思はずに浴ぶ 海女あま少女をとめ海馬かいばめかしき若人も足附の湯に月仰ぐらん 唯二人岩湯通ひの若者の過ぎたる後の浜の夜の月 などがある。
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
安産のまじないに要るとか言って、子安貝こやすがい海馬かいば松茸まつたけの石づき、何の事やら、わけのわからぬものを四方八方に使いを走らせて取寄せ、つくづく金持の大袈裟おおげさな騒ぎ方にあいそがつきました。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
とりなもんか、海馬かいばか、オットセイだろう。」
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
白い波の中を海馬かいばが泳いでる様に。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しか木立こだちの間などからやゝ遠く離れて見渡す大噴水こそ美であるが、近く寄つて女体ぢよたいの人魚や海馬かいばなどの口から吐き出す形を見るのは決して懐かしい物で無いと想つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
多々良たたら川に海馬かいばが出るそうだ。」
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)