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歸邸
其お
答へ
承はらずば
歸邸いたし
難し
平にお
伺ひありたしと
押返せば、それ
程に
仰せらるゝを
包むも
甲斐なし、
誠のこと申
上ん
兎に
角思ひ
立たせ
給へとて、
紀の
守が
迷惑氣にも
見えず
誘ふにぞ、
夫好からんとて
夏のさし
入りより、
別室を
仮住に
三月ばかりの
日を
消しゝが、
歸邸の
今日の
今も
猶殘る
記臆のもの二ツ
取りつきしまヽ
泣きて
離れず、
姉樣何ごとを
腹たちて
鎌倉なぞへお
出なさるぞ、
夫れも一
月や
半月ならば
宜けれど、お
歸邸は
何時とも
知れずと
衆人が
言ひたり、どの
樣に
仰しやる
共それは
嘘にて