此室こゝ)” の例文
此室こゝに重なり合ふ樣になつて寢て居るのだが、渠は慣れて居るから、其等の顏を踏附ける事もなく、壁際を傳つて奧の襖を開けた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
此室こゝが宜からうといふ蔵海の言のまゝ其室の前に立つて居ると、蔵海は其処だけ雨戸を繰つた。庭の樹〻は皆雨に悩んでゐた。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
あらはせて此室こゝびたしとおほせられたに相違さうゐはなしかくあがりなされよと洗足すゝぎまでんでくるゝはよも串戯じやうだんにはあらざるべしいつはりならずとせばしんもつ奇怪きくわい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
喫烟室スモーキングルームくも面倒めんだうなり、すこふね規則きそく違反ゐはんではあるが、此室こゝ葉卷シユーガーでもくゆらさうとおもつて洋服やうふく衣袋ポツケツトさぐりてたが一ぽんい、不圖ふとおもしたのは先刻せんこくネープルスかう出發しゆつぱつのみぎり
……先刻さつき此室こゝでお酒あがつてはつたお方もみな行かはりましたんだす。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
渠は成るべく音のしない樣に、入口の硝子戸をけて、てて、下駄を脱いで、上框の障子をも開けて閉てた。此室こゝは長火鉢の置いてある六疊間。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
けふりをいてみゝつればをりから此室こゝのきばにうつりて妻戀つまごひありくねここゑ、あれはたまではるまいか、まあ此霜夜このしもよ屋根傳やねづたひ、何日いつかのやうなかぜひきにりてるしさうなのどをするのでらう
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此室こゝも又六疊間で、左の隅に据ゑた小さい机の上に、赤インキやら黒インキやらで散々樂書をした紙笠の、三分心の洋燈が、螢火ほどにともつて居た。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『秋になつたら私が此室こゝにゐる樣にしようか知ら!』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『よろしい。此室こゝへお通し申して呉れ。』
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)