柳絮りゅうじょ)” の例文
あした美姫びきの肩の柳絮りゅうじょを払い、ゆうべに佳酒かしゅ瑠璃杯るりはいに盛って管絃に酔う耳や眼をもっては、忠臣の諫言は余りにもただ苦い気がした。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その拍子にふと見れば、こはそも如何いかに男は間違まがかたなく若旦那柳絮りゅうじょ、女はわが家に隠匿かくまったおそのではないか。しまった事をした。情ない事をした。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
遠くで、遅い柳絮りゅうじょが一面に吹き荒れた雪のように茫々として舞い上った。彼はこっそりと盗んでおいた宮子の手巾ハンカチをポケットから取出すと鼻にあてた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
時折西北の風がさわやかに吹き下ろして来ると、枝や葉が一斉になびいて、其間から無数の柳絮りゅうじょが真白な綿をちぎって飛ばすように、ふわりふわりと飛んで行く、まるで牡丹雪が降っているようだ。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
以前も一度上海シャンハイ郊外の工場を見に行った折に、いわゆる柳絮りゅうじょの漂々たる行くえを見送ったことがあったが、総体に旅客でない者は、土地のこういう毎年の風物には、深く心を留めようとはせぬらしい。
旧城市柳絮りゅうじょとぶことしきりなり
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
いきなりさっと柳絮りゅうじょの闇を破った物凄い小六の掛け声。と見る間にピラピラッと闇を縫って飛んだ投げ槍——ああ悪魔の毒槍。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金殿玉楼きんでんぎょくろうその影を緑波りょくはに流す処春風しゅんぷう柳絮りゅうじょは雪と飛び黄葉こうよう秋風しゅうふう菲々ひひとして舞うさまを想見おもいみればさながら青貝の屏風びょうぶ七宝しっぽうの古陶器を見る如き色彩の眩惑を覚ゆる。
がきの葉書の上を柳絮りゅうじょ飛ぶ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
全くどうにも仕様のないこの場合に立至っては今更のめのめと柳絮りゅうじょが親元の紙問屋へ相談にも行かれず
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
源内と柳絮りゅうじょとは、荷亭かていの宅できって貰った芍薬しゃくやくの花をブラさげていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
種彦は最初一目見るが早いか、しのび入ったの男というはほど遠からぬ鳥越とりごえに立派な店を構えた紙問屋の若旦那で、一時おのれの弟子となった処から柳絮りゅうじょという俳号をも与えたものである事を知っていた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
柳絮りゅうじょという新地の芸妓屋げいこやあるじが、相槌あいづちを打った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柳絮飛時花満城 柳絮りゅうじょの飛ぶ時 はな しろ
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)