末始終すえしじゅう)” の例文
お前にしてからが、俺のような一生世間師で果てようてえ者にくっついてくより、元の亭主の——ああいう辛抱人へけえった方が末始終すえしじゅうのためだぜ。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
末始終すえしじゅうには、これは天下の諸民を助けることになるのだ、世を安きに建て直す途上では仕方がないと、一生わき目もふらぬおすがただったものでしょう
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「進もうかよそうかと思って迷っていらっしゃるが、これは御損ですよ。先へ御出おでになった方が、たとい一時は思わしくないようでも、末始終すえしじゅう御為おためですから」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あれは身持が悪いから、末始終すえしじゅう親の頸に縄をつけ兼ねない奴だとおっしゃって、七年前に久離切って人別にんべつまで抜きました。隣に住んでいても口を利いたこともございません。
僕だって最初はじめからこういう間の中といっちゃあ、末始終すえしじゅうはきっとなきを見なければならないと思うから、今度こそ別れるような話にしようか、今度こそと、その度にしおれちゃあここへ来ると
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実は斯々かくかくと師匠は私の留守るすに起った一条を物語り、世尊院の住職のお目に留まったはいとしても、今から勝手なことをするようでは末始終すえしじゅう身のためにならぬからと、アッサリと注意をされ
秀江はどうせ復一を、末始終すえしじゅうまで素直すなおな愛人とは思っていなかった。いよいよ男の我壗わがままが始まったか、それとも、何か他の事情かと判断を繰り返しながら、いろいろ探りを入れるのであった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「分らぬ奴だな。上杉家や足利家がと、いつ言った。……しかしだ。武家全般の時風じふうとあれば、上杉家だって、末始終すえしじゅうにゃあ、ろくなことはありッこない。見切りをつけていい潮だ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分達もながの月日さえ踏んで行けば、こうなるのが順当なのだろうか、またはいくら永くいっしょに暮らしたところで、性格が違えば、互いの立場も末始終すえしじゅうまで変って行かなければならないのか
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しおのさしひきばかりで、流れるのではありません、どんより鼠色ねずみいろよどんだ岸に、浮きもせず、沈みもやらず、末始終すえしじゅうは砕けてこいふなにもなりそうに、何時頃いつごろのか五、六本、丸太がひたっているのを見ると
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『相思相愛、死ぬも生きるも、一蓮托生れんたくしょうと、ふたりして追って来たな。——だが、こう見るところ、男の甚三郎にはふるえが見える。長崎仕込みの軽薄才子——もし生きて添っても、その構えでは、末始終すえしじゅうが心もとない』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こればかりは妙なものでね。全く見ず知らずのものが、いっしょになったところで、きっと不縁ふえんになるとも限らないしね、またいくらこの人ならばと思い込んでできた夫婦でも、末始終すえしじゅう和合するとは限らないんだから」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)