普請場ふしんば)” の例文
普請場ふしんばとすぐくっ付いている角屋の裏口で、親方の甚内の声が近く聞え、やがて空地の中へは、小次郎たち三名の姿も見えている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其見世の先に普請場ふしんばがあつて、煉瓦職人の姿が其の前に見えたから、技師の話を憶出おもひだして、仕事をさせて貰はうと思つたからで。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
玉川砂利に古金物か、——どこかの石置場か、普請場ふしんばへ行けば手に入るだろう。金物も古釘と鍋の破片かけらと選り分けてあるところを
此の珍客にはフンシが必要だと気が付いて、昨夜慌てゝ炮烙ほうらくを買ひに行つたのはいゝが、砂がないのには困つてしまつて、五六丁先の普請場ふしんばから
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
めいめいの慾と執着しゅうちゃくとに、魂を、燃やしている頃、この屋敷から程近い、とある普請場ふしんばの板がこいの物影に、何やら身を寄せ合うようにして、ひそひそと物語っている男女の影——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
近所の者には気づかれずに済んだが、辰造たつぞうは勘のいいやつで、そのうえ道楽者だから女には眼が肥えていたようだが、或るとき普請場ふしんばでずけりと云やあがった。ひるの弁当のあとだ。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
日若座ひわかざ」の再建は、着々とすすんで、普請場ふしんばは活気を呈している。六月の強い太陽が新しい材木を光らし、聳え立つ高い屋根の梁に打ちつけられた、上棟式の板矢とのぼりとが美しい。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
去年よりははずむそうで、といっているうちに橋向こうから、東京などの普請場ふしんばで聞くような、女の声がしだいに高く響いてくる。月がところどころの板屋に照っている。雲の少しある晩だ。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
玉川砂利に古金物か、——何處かの石置場か、普請場ふしんばへ行けば手に入るだらう。金物も古釘と鍋の破片かけらと選り分けてあるところを
此の珍客にはフンシが必要だと気が付いて、昨夜慌てゝ炮烙ほうらくを買ひに行つたのはいゝが、砂がないのには困つてしまつて、五六丁先の普請場ふしんばから
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ここはただの普請場ふしんばとちがって、御城主様の発願ほつがんによる大事な御造営の場所——しかも勅額までいただくことになっている建立こんりゅうだ、そんな場所へ、万一
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日あくるひ平生いつもの通り仕事に掛つて見たが、仕事が手に附かない。普請場ふしんばからがもう厭になつて来た。何処へ行つて見ても、何にさはつて見ても、眺めても、娘の事が想出されて、生別わかれの辛さをひしと思知る。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
この珍客にはフンシが必要だと気が付いて、昨夜あわてて炮烙ほうらくを買いに行ったのはいいが、砂がないのには困ってしまって、五六丁先の普請場ふしんばから
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この普請場ふしんばにゃ、和介わすけの野郎が仕事にきているので、てめえは、信心にことよせて、和介の顔を見に来やがるのだろう。……いや、そうだ、そうに違えねえ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次は人波をかきわけて、路地の外へ出ると、裏から廻つて、二軒置いて先の普請場ふしんばに入りました。
尤も最初の二三回は、普請場ふしんばの砂があったお蔭で助かったけれども、生憎あいにく近頃ちかごろは何処にも砂なんかありはしない。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
棟上むねあげをしたばかりの普請場ふしんばであった。屋根はきかけてあるが、壁もない、羽目板も打ってない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、ご普請場ふしんばへお渡りとのことに、それは桑実寺のお台所へあずけて参りました。……時に」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「猿。ゆうべかな? ……。そちは外曲輪そとぐるわ普請場ふしんばで、だいぶ大言を吐いたというではないか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
普請場ふしんばの新しい大地に床几しょうぎをすえ、側にいる建立奉行こんりゅうぶぎょうの藤木権之助忠安ごんのすけただやすへ話しかけたのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奉行、目附めつけなどの警戒も元よりであろうが、秀忠将軍は若くて闊達かったつだ。よく侍側を従えて普請場ふしんばへも現れるという。そんな折、飛び道具なら瞬間で目的を果すことができよう。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
働こうとする時は、町で普請場ふしんばがあれば、大工や土かつぎの手伝いでもさせてもらう。重い車をいてゆく者を見れば、後を押す。汚い門前を見ればほうきを借りて掃かせてもらう。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御工事にたずさわるやから、一名のこらず、今暁とらの下刻までに、御城内の普請場ふしんばに勢ぞろいせよ。万一、時遅れたる者は、一切放逐ほうちくするぞ。——すぐ職方へ申し触れて馳せつけよ。——君命であるッ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
普請場ふしんばの一ヵ所に、黙然と、突っ立ったまま、半日はすぐ経った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)