おッ)” の例文
今度あなたの代りにきまりました縁の先方さきの、山河内の奥方てえ、あのたむしの大年増なんざ、断食をしないばかりに、むすめおッつけようといって騒いだと申すんで。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わっし猿坊えてんぼのように、ちょろりと影をうねって這出はいだして、そこに震えて立っている、お道姉さんの手に合鍵をおッつけた。早く早く、と口じゃあ言わねえが、袖を突いた。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
も一ツのかめしゅの方だって、手をおッつけりゃ血になるだ、なぞと、ひそひそばなしるのでござって
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして懐へ入れて持って帰れと来た日にゃあ、私は人魂ひとだまおッつけられたように気が滅入めいった。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
上口あがりくち突尖とっさきの処、隅の方に、ばさばさした銀杏返いちょうがえし、前髪が膝におッつくように俯向うつむいて、畳に手をついてこう、横ずわりになって、折曲げている小さな足のかかとから甲へかけて
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寝衣ねまきに着換えさしたのであろう、その上衣と短胴服チョッキ、などを一かかえに、少し衣紋えもんの乱れた咽喉のどのあたりへおッつけて、胸にいだいて、時のやつれの見えるおとがいを深く、俯向うつむいた姿なり
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おッつけるように猪口ちょくを措いて
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)