-
トップ
>
-
恐怖心
>
-
きようふしん
彼は
反目して
居るだけならば
久しく
馴れて
居た。
然し
彼は
從來嘗てなかつた
卯平の
行爲に
始めて
恐怖心を
懷いたのであつた。
かくして
最初の
一分間を
凌ぎ
得たならば、
最早不安に
思ふべき
何物も
殘さないはずであるが、
唯これに
今一つ
解説して
置く
必要のあるものは、
地割れに
對して
誤れる
恐怖心である。
勘次の
畑の
蜀黍は
被害者がいつたやうに、
情ないやうな
見窄らしい
穗がさらりと
立つてそれでも
其の
恐怖心に
驅られたといふやうに
特有な一
種の
騷がしい
響を
立てつゝあつた。
醫者は一
應見なければ
分らぬといつて
五月蠅い
勘次に
返辭しなかつた。お
品の
病體に
手を
掛けると
醫者は
有繋に
首を
傾けた。それが
破傷風の
徴候であることを
知つて
恐怖心を
懷いた。