必然きっと)” の例文
「さあ、この子は考えることが上手だから必然きっと先生にでもなるかもしれない。——ね。お前そう思わないかい。」と母は言った。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「ああ、妾が必然きっと連れて来て見せるから、温順おとなしくして待っておいで。え、それでもいやかえ。ねえ、お葉さん、確乎しっかり返事をおよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お徳はお源がどんな顔をして現われるかと内々待ていたが、平常いつも夕方には必然きっと水を汲みに来るのが姿も見せないので不思議に思っていた。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
さだめてくさりかけてゐるであらうし、また眞夜中まよなか幾時いくときかは幽靈いうれいるといふ……えゝ、どうしょう、めたら?……いやらしいそのにほひと、けば必然きっと狂亂きちがひになるといふあの曼陀羅華まんだらげびくやうな
必然きっと餓鬼がきたのだ何か食うとぐ治ると云って、もっている饅頭まんじゅうれた、僧はよろこんで一ツくったが、奈何いかにも不思議、気分が平常に復してサッサッと歩いて無事に登山が出来たと話した事があった
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
「東京のせがれの方から一昨日手紙が参りまして、冬子の婚礼について来月初旬には必然きっと帰って来ると云うことでした。」と、お政がず口を切った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「そんなら何故なぜお前さん月のうち十日は必然きっと休むの? お前さんはお酒はのまないし外に道楽はなし満足に仕事に出てさえおくれなら如斯こんな貧乏は仕ないんだよ。——」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「入れてあげますとも、お母さんにも言って必然きっとそうしてあげますよ。僕はうそはきませんよ。」
音楽時計 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ここへ倅が帰って来ると不可いけませんから……。彼児あれは正直者ですから、ひとから嫌疑うたがいを受けて家捜やさがしをされたなどと聞くと、必然きっとおこるに相違ありませんから……。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あれがよくお宅の前の……そう、ちょうどこの辺に佇っていることが多いものですからね、どういう訳なんですか、ふいにいないと必然きっと此処に立っているんですよ。」
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
長助どんに相談したら必然きっと若旦那に訴えるに相違ない。そうなると、わたしは生証人に曳き出される。お内儀さんやお久どんはそんなことを頼んだ記憶おぼえはないと云うに決っている。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そういう仕事はやっても必然きっと努まらなかった。
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)