御宅おたく)” の例文
文庫ぶんこ御宅おたくのでせうね。いんでせうね」とねんして、にもらない下女げぢよどくがらしてゐるところへ、最前さいぜん仲働なかばたらき
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
または日本橋辺で室町むろまち御宅おたく、小網町の旦那というように親類を呼ぶごとく、個々の別宅に何か名をつけておかなくてはならぬようになったのであります。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
先生の御宅おたくい寄せてもらうようになりましてから、すっかり様子変りまして、絵エ書いたり、ピアノの稽古けいこしたりして、一日家に落ち着いてますもんですから
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私は家人に「御宅おたくでは、こんなに昼間鼠が騒ぎますか」と訊ねて「いいえ、そんな事はありません」と云う様なことを聞いた事も度々たびたびある、仮令よし、それが鼠としても
頭上の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
「ほんとに……あの、藤村ふじむらさんの御宅おたくで校友会のあったあの時お目にかかったきりでしたねえ。」
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ところが、仙台で小宮こみやさんの御宅おたくを訪ねた時に、丁度水曜の面会日に当ったことがある。
語呂の論理 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
青山あをやま御宅おたくからですか」と叮嚀に眺めてゐたが、別に云ふ事がないものだから、おもてを引つ繰り返して
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もっとも寺田先生のことは、冬彦ふゆひこの名を通じてよく知っていたし、時々御宅おたくの方へ遊びにも行っていたので、事情さえ許せば先生の下で研究実験の指導をうけたいという強い希望が心の底にはあった。
御宅おたくでも別に御変りもありませんか」と代助は、つかてたひとの如くにたづねた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御宅おたくからの様です。灯火あかりつてませうか」とうながす如くに注意した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)