川獺かわうそ)” の例文
なにごとも起らなかった、まれに川獺かわうそが魚を追いこみでもして激しい水音を立てるほかは、いつもしんと陰鬱にひそまりかえっていた。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こっちの好きに付け込んで、狐か川獺かわうそが悪いたずらをするのかとも疑ったが、喜兵衛も武士である。腰には家重代の長曽弥虎徹ながそねこてつをさしている。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
川獺かわうそか狐か、それにしても白昼に鰊が消えて無くなるのは不思議であった。そして、四番目に変死したのが彼の女工で、後藤菊太郎という人の妻君であった。
堀切橋の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
アヴリルは川獺かわうその帽子をかぶっていた、ルーヴェルは丸い帽子をかぶっていた、老ドラポルトは禿頭はげあたまで何もかぶっていなかった、カスタンはまっかなきれいな顔をしていた
すると、餌ものをうかが川獺かわうその眼差がちらりと水槽の硝子の向に閃いているのだった。
曲者 (新字新仮名) / 原民喜(著)
◆服装 外套は焦茶色の本駱駝ほんらくだで、裏は鉄色の繻子しゅすえりは上等の川獺かわうそ。服は紺無地こんむじ羅紗らしゃ背広せびろの三つ揃いで、裏は外套同様。仕立屋の名前はサンフランシスコ・モーリー洋服店と入っている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「沼とか川とかなら、川獺かわうそかなにか出てこんなこともありますが、こんな海のまんなかでは……」
水中の怪人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小泉八雲の書いた怪談の中には、赤坂に出る目も鼻もないのっぺらぼうの川獺かわうそのことがあるが、築地の周囲まわりの運河の水にも数多たくさんの川獺がいて、そこにも川獺の怪異が伝わっていた。
築地の川獺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
神南も森積もおどろいて前後から支えようとすると、石川は身をひるがえして大溝へ飛び込んで、川獺かわうそのように素ばやく西のかたへ逃げ去った。あっけに取られたのは神南ら二人である。
妖婆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのひねこびた松並木をはさんで、枯れたあしの茂みがところどころに見える、それらはみな沼か湿地で、川獺かわうそいたちんでいるといわれ、私も川獺は幾たびか見かけたし
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのひねこびた松並木をはさんで、枯れたあしの茂みがところどころに見える、それらはみな沼か湿地で、川獺かわうそいたちんでいるといわれ、私も川獺は幾たびか見かけたし
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
松並木のかなたに、ところどころ暗くあしのむらがったところが見えるのは沼地か湿地で、ときどき葦切よしきりが飛び立ったり隠れたりしている。川獺かわうそいたちんでいるのもそのあたりである。
お繁 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)