りょう)” の例文
お蓮様と丹波が、腹心の者十数名を引き連れて、近頃、この向島を遠く出はずれた渋江村しぶえむらりょうに、それとなく身をひそめて何事か画策していることを。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
為永ためなが中本ちゅうほんにあるりょうというような塩梅あんばいで、美男であり風雅である眉山の住居すまいには持って来いであった。が、その頃から眉山は段々と陰気臭く詩人臭くなった。
やがて橋場のわたしに至るに、渡小屋わたしごやの前(下巻第五図)にはりょうにでも行くらしき町風まちふうの女づれ、農具を肩に煙管きせるくわへたる農夫と茅葺屋根の軒下に行きちがひたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そのなんでごぜえます、王子の在におりょうがあるので、その庵室あんしつ見たような所のわきの、ちっとばかりの地面へうちを建てゝ、楽に暮していた風流の隠居さんが有りまして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
螢沢へ着いたのは、昼近いころ、平次は八五郎に案内させて、まず朝倉屋のりょうに向いました。
おれァ、一半蔵松葉はんぞうまつばよそおいという花魁おいらんを、小梅こうめりょうまでせたことがあったっけが、入山形いりやまがたに一つぼしの、全盛ぜんせい太夫たゆうせたときだって、こんないい気持きもはしなかったぜ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
している途中、これから勤行ごんぎょうの座にすわり、りょうの日課をすまさねば、自分の体にはなれぬのじゃ。……それをえてから訪ねてゆくほどに、おもとは、弟の看護みとりをして下さるように
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大須賀玄内おおすがげんないと申す。寺島てらじま村河内屋敷のりょう食人かかりびとの、天下晴れての浪々の身じゃ、はっはっは。」
その乗合の混んでいるしとみの蔭にうしろ向きになっている仲間ちゅうげんづれの女が、この間りょうへ手形を貰いに来た森啓之助のかこいものだろうと、新吉は遠くから眺めていたが、自分の居場所は
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太夫たゆう、おまえは、立派りっぱなおかみさんのそのほかに、二つもりょうをおちの様子ようすくてあまたの、御贔屓筋ごひいきすじもござんしょうが、あたしゃこのままこがれんでも、やっぱりおまえ女房にょうぼうでござんす
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
丹波をはじめ十五人の道場のものどもが、いまだに顔を出さないのみか、さほど広くもなさそうなこのりょうが、イヤにヒッソリかんとして、どこにその連中がいるのか、そのけはいすらもないことです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
所々ところどころに見える灯は、どこかのりょう隠居所いんきょじょだの」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)