寐付ねつ)” の例文
三四郎はそれなり寐付ねついた。運命も与次郎も手をくだし様のない位すこやかなねむりに入つた。すると半鐘のおとで眼がめた。何所どこかで人声ひとごゑがする。東京の火事は是で二返目である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
子供はうに寐付ねついたあとなので奥はしんとしていた。下女げじょは一番懸け離れた台所のそばの三畳にいるらしかった。こんな時に細君をたった一人で置くのが健三には何より苦しかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小六ころくは六でふからて、一寸ちよつとふすまけて、御米およね姿すがたのぞんだが、御米およねなかとこはういて、ふさいでゐたので、寐付ねついたとでもおもつたものか、一言ひとことくちかずに
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其時そのときつぎ柱時計はしらどけいが二つた。其音そのおと二人ふたりとも一寸ちよつと言葉ことば途切とぎらして、だまつてると、さらしづまりかへつたやうおもはれた。二人ふたりえて、すぐ寐付ねつかれさうにもなかつた。御米およね
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
くもつたのかと思つて、わざ/\椽側迄て、かす様にしてのきを仰ぐと、ひかるものがすぢを引いてなゝめにそらを流れた。代助は又蚊帳かやまくつて這入つた。寐付ねつかれないので団扇をはたはた云はせた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)